自分では左足から動いたつもりだったのに、動画を見ると、その前に上半身が右へ動いている。スマホで自分の動きを撮ると、こんな違いに気づくことがあります。
映像を見ていると、「ここが曲がっている」「左右がそろっていない」と、気になるところを探したくなります。ただ、形を直すことに気を取られすぎると、動いているときに自分が何を感じていたのか、かえって分からなくなることもあります。
呼吸は楽だったか。足裏にはどんな感触があったか。怖さや力みはなかったか。こうした感覚も一緒に残しておくと、動画から分かることが増えてきます。

Photo: Kampus Production / Pexels
撮る前に何を見るかを決める
まずは、確かめたい動作を一つ選びます。「姿勢を全部見よう」とすると、あちこちが気になってしまいます。
たとえば腕を上げるなら、「どちらの腕が先に止まると感じるか」。椅子から立つなら、「足裏のどこへ圧が移るか」。動作の中で知りたいことを一つに絞ってみてください。痛みや不安がある動きを無理に撮る必要はありません。安全に繰り返せる範囲で行います。
撮影の前に一度動いてみて、感じたことを短く書いておきます。
「右のほうが重い」
「最後だけ息が止まる」
「左足から先に押した感じがする」
上手にできたかどうかより、動いている途中に何が起きたかを言葉にします。はっきりしなければ、「分からない」と残しておけば十分です。動画を見てからだと映像の印象に引っ張られやすいので、先に自分の感覚を書いておきます。
スマホを固定して撮る
スマホは手で持って追いかけず、同じ場所に固定します。カメラも一緒に動くと、身体がどのくらい動いたのかが分かりにくくなるためです。
撮る角度や距離、高さに加えて、服装、明るさ、動く速さによっても見え方は変わります。あとで比べることを考えて、撮影する位置を決めておきましょう。
周囲の人や物にぶつからず、転ぶおそれのない場所と動作を選んでください。公共の場所なら、他の人が映り込まないようにします。肌や自宅の様子が映る場合は、保存先と共有設定も撮影前に見ておきます。

映像で見えたことと感じたことを並べる
動画を再生したら、最初に決めたところを見ます。左右の違いなら、どの瞬間から差が出るのか。立ち上がりなら、足と上半身のどちらが先に動き始めたのか。
「姿勢が悪い」で済ませるより、「右肩が先に上がった」「二回目は足幅が広かった」と書くほうが、何を見たのかが分かります。それを、撮る前に残した感覚と並べてみます。
思っていたとおりに動いていたなら、自分は何を感じてそう思ったのか、少し振り返ってみてください。足裏の圧だったのか、呼吸だったのか、動く速さだったのか。映像と感覚が合っていたときにも、自分が頼りにしている手がかりを探せます。
冒頭のように、「左から動いたつもりだったが、その前に上半身が右へ動いていた」と気づくこともあります。そうした違いがあれば、次に動くとき、上半身が動き始めるところを感じてみます。感覚と映像が食い違った場所に、もう一度見たいことが見つかります。
一つだけ変えてもう一度撮る
次は、足幅を少し変える、動きをゆっくりにする、動き始める前に呼吸を確かめるなど、試すことを一つ選びます。いくつも同時に変えると、何によって違いが出たのか分かりにくくなります。
もう一度動いて撮影し、映像を見る前に感じたことを言葉にします。そのあとで、同じ位置から撮った動画を見ます。比べる動作や回数、カメラの位置は、できる範囲でそろえておきます。
何回か撮ったときは、きれいに見えた一回だけで判断しないようにします。たまたまうまく見えた形を目標にすると、その形を再現することばかり考えがちです。同じ条件でも、毎回どのくらい動きが違うのか、感じ方も変わるのかを見てください。ばらつきも、そのときの身体の様子を知る手がかりになります。
見た目が変わったあとの動きやすさも感じる
映像では形が整って見えても、前より動きにくくなることがあります。その場合は、変えたことが今の自分に合っているか、考え直したほうがよさそうです。
見た目がほとんど変わらなくても、呼吸が楽になったり、動き始めの迷いが減ったりすることもあります。画面上の形だけでは、そこまでは分かりません。
そもそも、何のために動きを撮ったのでしょうか。見た目をそろえたいのか、日常の動作を楽にしたいのか、競技の動きを安定させたいのか。目的によって、見ておきたいところは変わります。映像で何が変わったか、自分はどう感じたかを分けて残し、最初の目的に照らして考えます。
撮った動画の扱いも決めておく
撮影が終わったら、必要のない動画を残し続けていないか見直します。クラウドへ自動保存されているか、家族と共有される設定になっていないかも確認してください。
他の人が映った動画は不用意に送りません。指導者に見せるときも、誰に、何を見てもらうために送るのかを決めておきます。安心して使えるようにしておくことも、撮影を続けるうえで大切です。
先に自分で動いて感じ、そのあとで映像を見る。何かを試すなら一つだけ変えて、また感じてみる。その繰り返しの中で、「自分はここを感じて動いていたんだ」と、少しずつ具体的に分かってきます。